【ぶらっと堺をあるこう!】『ぶらさかい』中区・陶器(とうき)篇5「(元)タバコ農家で神様と出会う」:

堺のまちをぶらり歩きで楽しむ【ぶらさかい】の中区陶器篇も第5回となりました。今回も案内をお願いしている中区の物知りハカセ岡村理良さんと一緒にお届けします。

▲国の登録有形文化財である兒山家住宅。

 

 

前回訪れたのは、江戸時代に陶器の大庄屋(おおしょうや)をつとめた兒山家(こやまけ)です。兒山家では、地域の人と一緒になって、江戸時代の古民家を田園風景ごと守ろうとする取り組みが行われていました。

 

前回のクイズは、この兒山家の納屋(なや)を改装したナヤ・ミュージアムに展示されていた、奇妙な農具から。この農具を使って栽培する作物は何? というのがクイズでした。

▲この農具で作る作物とは一体何?

 

――岡村ハカセ、さて、これは一体なんの作物を栽培するためのものなのでしょうか?
岡村ハカセ「答えはタバコです。この器具はタバコの種をまくために使われた農具なのです」
――この穴を使って均等な距離で畑に種をまいたんでしょうか。それにしても、タバコを陶器で栽培していたのですね。おどろきです。タバコって、どこか外国で作っているようなイメージがありました。

 

岡村ハカセ「栽培していたどころか、タバコは江戸時代から陶器で作られていて、陶器の名産品だったのですよ。今回の『ぶらさかい』では、陶器でタバコを作っていたというお宅へ案内することにしましょう」
――大庄屋さんの次はタバコ農家さんですねー。よろしくおねがいします!!

 

■陶器はタバコの名産地

陶荒田神社のほど近く、上下左右にうねる小道をゆくと目指すお家はありました。
岡村ハカセ「さて、今日はいらっしゃるかな……いらっしゃると話が早いのだけれど。岸田さーん。いてはりますかー」
岡村ハカセが玄関から名前を呼ぶと、1人の年配の男性が姿をみせました。

▲陶器のくねくね道をずんずん進む2人。

 

岡村ハカセ「こちらは岸田光雄さん。岸田さん、タバコ小屋をみせたってほしいんやけど」
岸田「兄貴んところのタバコ小屋かい。ええよ。ついておいで」
――ありがとうございます。タバコ小屋というのは、お兄さんの所にあるのですね。タバコ小屋って、なんでしょうか? 喫煙所ですか?
岡村ハカセ「いやいや違いますよ。とりあえずいってみましょう」

 

▲タバコ小屋を前に、岡村ハカセ(左)と岸田光雄さん(右)。

 

岸田さんに案内されて、すぐご近所のお兄さん(岸田良雄さん)のお宅へ。前庭があって、その片隅に、小屋が2つありました。1つは簡素なつくりのものと、もう1つは小屋というよりは離れとでもいうような、2階建の高さがある立派なものでした。この大きな方の小屋がタバコ小屋のようです。屋根が二重になっているのが不思議です。

 

▲一番奥の小屋がタバコ小屋。屋根が二重になっています。

 

岸田「今は、小屋に手を入れて物を置いたりしてるんやけど、もともとはタバコ小屋やってん。タバコ小屋では石炭で火を焚いて、集めてきたタバコの葉をいぶして乾燥させたんや」
――なるほど、タバコを乾燥させるための小屋がタバコ小屋なんですね!
岸田「屋根の下をみてみ。あそこがフタになっていて、いぶす時はあそこをあけて煙を外に出したんや」
――高いところにフタがありますね。開けるのに苦労しそうです。
岸田「昔はフタにヒモをつけていて、外からひっぱって開ける仕組みにしてたんや」
--おおーカッコいいギミック(しかけ)!!

 

▲二重屋根に秘密あり!! 上の屋根と下の屋根の間に木のフタがあり、開け閉めしてタバコの葉を乾燥させました。

 

岡村ハカセ「今や、この地域に残る唯一のタバコ小屋が岸田さんのこのタバコ小屋なんです」
――それは貴重なものなんですねーーー!
岡村ハカセ「ついさいきんまで、この地域は多くの農家がタバコの栽培をやっていました。福田には専売公社の集積所があって、上神谷(にわだに)や美木多(みきた)、深井や和泉からもタバコの葉が集められてきたようです」
岸田「ものすごい量になるので、この日は上神谷から、この日は美木多からと持ちこむ日が決まっていたんや。うちの父親が役員をやっていたんやけど、タバコは専売やから勝手に売ることはでけへん」
――そうか。タバコは専売制ですものね。兒山家の松尾亨子さんが、小さいころ「おまわりさんに怒られるかな」とドキドキしながら、タバコの葉をちぎったのも、タバコの葉が特別な扱いを受けていたからなんでしょうね。
岸田「集めたタバコの葉を選別して、一番いい葉は天葉、一番悪い葉は泥葉と呼ばれました。本来あってはいけない闇に流れるタバコというのがあって、泥葉をかき集めて、(返還前の)沖縄などに流されたりもしましたが、きびしく取り締まられていたとききましたね」

 

▲今のように電動ポンプのない時代では、水利が良くない陶器では、お米の栽培は難しく、タバコの栽培がおこなわれたのかもしれません。

 

岡村ハカセ陶器タバコは昔から出来がよくて、京都でも陶器タバコは良いタバコと人気があったそうです。陶器の農家が、タバコの栽培の指導に九州の宮崎へいったという話もあります」
――一体、いつごろからいつごろまで陶器でタバコを作っていたのですか?
岸田「そうやなぁ、わしが高校のころまでは、やってたんちゃうかな」
――とすると、昭和の30年代、40年代ぐらいまでですか。
岡村ハカセタバコは戦国時代に日本に伝わり、堺ではタバコをきざむタバコ包丁が作られます。江戸時代の陶器藩でもタバコづくりが奨励(しょうれい)されていたようです。高く売れるタバコをつくっていたことも、陶器藩が豊かな藩だった理由のひとつかもしれません」
――長く地域を支えたのがタバコだったのですね。

 

■牛のいた風景

▲小屋をのぞきこむと、大きな牛と目があったりして、ちょっと怖かったりしたとか。

 

――ところで、もう一つある小屋はなんの小屋なんですか?
岸田「こっちは、もともとは牛小屋やったね」
――え、牛も飼ってたんですか!? 牛乳でもとってたんですか?
岸田「そうやないよ(笑) 農作業をさせるんやよ」
岡村ハカセ「昔はトラクターなんてなかったから、牛を使って農作業をしていたのですよ」
――そういうことか。
岸田「牛や馬の仲買(なかがい)をする馬喰(ばくろう)いう人らが、牛を売りにきてね、農家は馬喰から子牛を買って農作業で使いながら1~2年育ててまた馬喰に売るんや。牛と一緒に写ってる写真があるから、みるか?」
――ぜひぜひ。

見せてもらったのは堺の歴史を写した写真集の中の1枚です。大きな牛と少年のツーショットを岸田さんは見せてくれました。
岸田「この牛をひいてるのがわしや」
なんと、少年が岸田さん本人でした。

 

▲牛をひいた少年じゃかつての岸田さん。つい最近までは、牛は身近な存在だったのですね。

 

――中学生ぐらいですか? 立派な牛ですね。
岸田「毎年8月25日に、河内長野の観心寺『うしたきさん』っていう、まぁ牛の品評会があってな。そこに連れていくんや」
――牛をひっぱって河内長野までいくんですか、大変ですね。品評会は、どういう目的でいくんですか? 村のほこりをかけて、とか?
岸田「そら、いい成績やったら、高く売れるからね」
――現実的なはなしやなぁ(笑)

 

▲岸田さんのお兄さんの岸田良雄さんも登場。突然押しかけてすいませんでした!!

 

岡村ハカセ「そういえば、岸田さんのお兄さんのお宅には、面白いものがあるので、それも見せてもらいましょうか」
岸田「ええよ。兄貴も帰ってきてるかな?」
そうして今度は、岸田良雄さんのお宅にもあげてもらいました。

 

▲天井からおもむろにぶらさがっている不思議な物体? なんだこれは!?

 

――これは、なんですか? 天井から出た木の棒に台がひっついている??
岡村ハカセ「これは神棚です」
――神棚って、普通壁にかかってません? それに何も載ってませんし。
岸田「これは360度動くねん。なんのために動くかわかる?」
――360度!? さあわかりませんね?
岸田「毎年お正月にだけ使うんやけど、毎年いい方角があるやろ。その方角に合わせるねん」

 

▲自在に回転する神棚!! またもでました昔のギミック(仕掛け)!!

 

――うわー、昔のものは面白いですねぇ。ナヤ・ミュージアムだけじゃないですね。陶器の昔のおうちは、不思議がいっぱいのワンダーランドですよ!
岡村ハカセ岸田さんの所には、畑にも神様がいるからそれも見せてもらいましょう。岸田さん案内してくれますか?」
岸田「ええよ」

 

▲昔の武器なんかもあったりします。

 

そういって、お家から少し離れた所にある畑の畦道まで連れて行ってもらいました。

岡村ハカセ「実は2つ並んでいるものがあるのだけれど、ひとつが神様です。さて、どっちが神様でしょうか?」
――丁度これはクイズになりますね。

さて、ここでぶらさかいクイズ!!
こちらにある小さな祠(ほこら)積んだ石がありますね。このどちらが神様でしょうか? というのが、今回のぶらさかいクイズです!!

 

▲こちら祠(ほこら)です。中にお供えがしてあるようです。

 

▲こちら積んだ石です。四角柱の石の上に円柱の石が乗っかっています。

 

【次回予告】
長く続いたぶらさかい中区陶器篇もいよいよ最終回!? バス路線の終点にもなっている某所から陶器を一望します。そして中区陶器篇の次は一体どこへ……? どうなる、ぶらさかい新シリーズ??

さかマガ11月号 10/19発行!!
さかマガ11月号 10/19発行!!