新型コロナウイルスの流行で、日常生活に大きな変化が求められています。
仕事についても、自宅などでのテレワークを緊急導入する企業が増えました。
テレワークは厚生労働省が推奨してきた新しい働き方です。
しかし大企業やIT系のベンチャーなどのものというイメージがあり、まだ定着しているとは言えない状態でした。
しかし今回のことで一気に実施する企業が増え、中小企業にこそ導入のメリットがあることが分かってきました。
そこで今回と次回にわたって、テレワークのメリットと導入の実態についてお伝えしたいと思います。
◆テレワークって何?
テレワークとは、パソコンやスマートフォンなどの情報通信技術(ICT)を活用して、場所や時間にとらわれずに働く方法のことです。TEL(離れて)とWORK(仕事)から作られた言葉です。
テレワークには、自宅で働く在宅勤務、移動中や出先でのモバイル勤務、会社以外の場所で働くサテライトオフィス勤務などがあります。
【在宅勤務】
毎日、自宅にこもって仕事をしているイメージですが、日本では週に1~2日程度、自宅で働くケースが一般的。最近では部分的な在宅勤務を導入している企業も増えました。これは学校のPTA行事や役所での手続きなどは時間休暇をとって済ませ、残りを在宅勤務する制度で、従業員と会社の双方にメリットがあります。
【モバイル勤務】
移動中の電車の中や顧客先、カフェやホテルのロビーなどで仕事をする働き方です。営業職など外回りの多い仕事では、空き時間を有効活用できるメリットがあります。会社に寄らず直行・直帰すれば、移動時間が短縮できて、ワーク・ライフ・バランスの向上にも効果があります。
◆テレワークのメリットは?
テレワークの導入には、下記のようなさまざまなメリットがあります。
1 業務生産性が向上します!
【モバイル勤務の営業担当者の場合】
たとえば得意先で在庫状況をたずねられたとします。これまでは会社に帰って調べてから顧客に報告していましたが、その場でタブレットから会社につないで、即座に回答できるようになります。
専門的な質問を受けた場合も、Web会議システムなどで社内にいる専門家を呼び出して対応できるので、訪問は営業担当者ひとりで済みます。
次の顧客へのアポイントまで数時間あった場合も、会社に戻らずカフェなどで仕事をすれば、移動効率がアップ。空いた時間を活用することで、訪問件数が増えるなどの効果が期待できます。
【在宅勤務の事務職の場合】
電話や来客、同僚などから話しかけられることがないため、デスクワークを中断されず、集中して仕事に取り組めるので生産性が上がります。
テレワーク実施後のアンケートでは、約9割の企業で「生産性が向上した、または変わらない」と回答しています。
テレワークは従業員の意識改革にも効果があります。毎日の業務を上司に報告したり、自分で計画して実行しなければなりません。ひとり一人のフットワークも軽くなり、他部門や他社との連携も進みます。多くの企業で「社員の自律性が高まった」というアンケート結果も得られています。
2 新規雇用に有利、企業イメージもアップ!
テレワークを導入して「働きやすい環境」をつくることにより、優秀な人材を採用しやすくなります。特に最近の女子学生は、結婚後も働き続けたいと考える傾向にあり、在宅勤務制度のある企業の人気は高くなりつつあります。
ある会社では以前は新卒募集をしても、せいぜい数人程度の応募だったのに「在宅勤務・モバイル勤務可能」としてからは、毎年数百人以上の応募が集まるようになりました。
またワーク・ライフ・バランスを確保しやすいと感じられるためか、企業ブランドやイメージがアップし、従業員の「満足度と意欲の向上」にもつながります。
3 従業員の離職防止にも効果が!
テレワークの導入は、従業員の離職防止にも効果があります。内閣府の調査では、第一子を出産したあとに離職する女性の比率は47%にものぼっています。企業にとってもせっかく教育して仕事に慣れてきた従業員が離職するのは大きなマイナス。本人にとってもキャリア中断は大きなデメリットとなります。たとえば、産休明けに在宅勤務が行えるようにすることで、仕事を継続しやすくなります。
日本では家族を介護するために離職する人が年間10万人もいると言われています。団塊の世代が後期高齢者になる時代には、さらに介護離職が増えることでしょう。テレワークを活用すれば、介護と仕事の両立が可能となります。介護離職を防止することは、日本にとって緊急の課題です。
4 仕事もプライベートも充実!
在宅でテレワークをすることによって、通勤時間が不要になります。その時間を自己啓発や睡眠、家族と過ごす時間にあてることができます。保育園の送り迎えが楽になったり、介護や家事の時間を確保しやすくなったりします。
また、テレワークは怪我や病気の時にも有効です。たとえば、足の怪我で休んでいても、手は問題なく動かせるのでパソコンは自由に使えるでしょう。テレワークを活用すれば、通常に近い仕事をこなすことができます。
下記はテレワークを実施している企業の従業員に、ワーク・ライフ・バランスについてアンケートをとった結果です。
家族と過ごす時間が増えた人は78.4%、家事の時間が増えた人77.6%、育児の時間が増えた人76.8%、介護の時間が増えた人は33.3%。自宅で過ごす時間が増えたことで、家族との係わりが増えています。
また自己啓発の時間が増えた人40.7%、睡眠時間が増えた人37.9%となっており、自分のために使える時間も増えています。
テレワーク利用によって増減した時間
出典:厚生労働省「テレワークではじめる働き方改革(図表1-7テレワークの利用によって増減した時間)」
5 コストも削減!
意外に知られていませんが、テレワークはコスト削減にも有効なんです。昼間は営業や現場担当者が出払っていて、社長と事務職が2~3人しかいないというオフィスの風景はよく見られますね。こうした企業でテレワークを導入すれば、広いオフィスは不要となり、賃料や電力などのコストも削減できます。
また、取引先や現場に直行・直帰すれば、交通費や残業代も削減できます。しかもテレワークを導入した多くの企業で、残業代は10%以上減少しているというデータもあります。
6 非常時にも強い会社に!
テレワークは自然災害や新型コロナウイルスなどの流行にも強いのです。普段から在宅勤務をしていれば、非常事態が発生しても事業継続が可能となります。本人や家族が感染症に罹って、しばらく出社できない場合がありますが、このような時も在宅勤務制度があれば、体調が良くなった時点で在宅勤務を開始できます。
東日本大震災後の首都圏の交通機関の混乱時でも、IT企業や外資系の企業といったテレワーク導入企業の多くが在宅勤務をすることにより、支障なく業務を継続できました。
また、大雪や台風などの発生時にも在宅勤務に切り替えれば、無理な長時間通勤を避けることも可能です。
次回は
テレワーク導入のメリットについて、お分かりいただけたと思います。次回は中小企業でテレワークが進まない理由や、導入方法についてお話していきたいと思います。