Withコロナの時代を生き抜くために(2) -中小企業がテレワークを導入するための第一歩-:

 

新型コロナウイルスの流行で、テレワークを導入する企業が増えました。
テレワークは大企業やIT系のベンチャーなどでは取り入れられていますが、中小企業ではまだ定着しているとは言えません。
総務省の「平成29年通信利用動向調査」によると、従業員2,000人以上の大手企業では、38.7%がすでにテレワークを実施。それに比べて従業員100〜299人の中小企業では10.1%と、約10社に1社が導入しているに過ぎません。

しかしWithコロナの時代に突入したいま、中小企業にこそ導入していただきたいのがテレワーク。
「うちの会社にも課題はいろいろあるけれど、何から手をつければいいのか……」と悩んでおられる経営者の皆さん。聞いたことはあっても、自社とは関係ないと思っていた“テレワーク”が社内の課題解決に一役買ってくれるかもしれませんよ。

前回はおもに導入のメリットについてお伝えしましたが、今回は中小企業でテレワークが進まない理由や、導入方法についてご説明していきたいと思います。
※前回のコラムはこちら

テレワークのメリットをおさらい

前回のコラムでもご紹介しましたが、テレワークの導入にはいろいろなメリットがあります。
●業務生産性が向上し、従業員のプライベート時間が充実する
●通勤や移動の時間を減らし、大幅なコスト削減ができる
●産休・介護などによる休職で、キャリアが途切れない
●働きやすい会社というイメージで、優秀な人材を確保しやすい
●自然災害や感染症の流行などが起きても、業務を継続できる

中小企業がテレワークを導入しない理由

●うちの会社にはテレワークに適した業務がない
●うちはIT環境が整っていないから、テレワークの導入ができない
●テレワークだと社内のコミュニケーションが図れず、業務が滞るのでは
●テレワークだと、社員がちゃんと仕事をしているか把握できない

このような理由から、テレワークの導入を避けてきた中小企業も多いのではないでしょうか。
しかしIT技術の発達により、テレワーク導入のハードルは下がってきています。中小企業であってもITツールを活用することで、さまざまな業務をテレワークで実施することができます。


出典:エン・ジャパン株式会社「人事のミカタ」アンケート
有効回答数:491社 調査期間:2019年6~7月

テレワークに使える助成金

国や地方自治体は、中小企業のテレワークを推進するために、助成金や補助金制度を設けています。今年は新型コロナウイルス感染拡大に対応するため、新しい助成金制度も増えました。
こうした助成金を上手に利用すれば、中小企業でも初期投資のコストを抑えて、テレワークを導入することが可能です。コロナ禍のいまこそ、公的な補助を受けて、企業にさまざまなメリットをもたらすテレワークの導入を検討してみませんか。以下に大まかな流れを紹介します。

テレワーク導入の第一歩

1 まずは自社の業務の見直しをします。

業務時間、どのような書類を使っているか、テレワークが実施できるシステムが整っているか、セキュリティや個人情報などの問題はクリアできるかなどを検討します。さらにWeb会議システムなどを利用したコミュニケーションの方法などを確認します。

その上で、現状の業務を
●テレワークでも現状の働き方で支障のない業務
●何らかの対策をすれば、テレワーク可能となる業務
●人と対面することが欠かせないなど、実施困難な業務
に分類します。

2 テレワーク対象者を決めます。

多くの企業では、育児・介護を行っている従業員を対象としています。効果が具体的で、他の従業員の理解も得やすいためです。しかし対象者のなかには、自分だけ特別扱いされていると、肩身のせまい思いをする人がいたり、その他の従業員が不公平に感じることもあるので注意しましょう。

3 具体的なテレワークの方法を決めます。

テレワークを行う場所、頻度などの制度的なものを決めていきます。在宅勤務というと、毎日自宅で仕事をすると誤解しがちですが、日本の企業の場合は、多くが週に1~2日程度です。
在宅勤務、モバイル勤務、サテライトオフィス勤務のうちどの働き方にするか、モバイル勤務なら直行・直帰を認めるのか、などなど決めるべきことはたくさんあります。

4 社内制度やルールの整備をします。

始業・終業のルールや、在宅勤務者の評価など労務管理の方法も見直す必要があります。
経営者のなかには「在宅勤務者は給与を下げても良い」と勘違いされている方がおられますが、業務内容や所定労働時間といった労働条件に変更がない限り、給与を変更することはできません。
テレワーク時のコスト負担についても取り決めが必要です。自宅でテレワークする場合は、通信費、光熱費、パソコンなどの機器の費用負担についても取り決める必要があります。インターネット環境などはほとんどの家庭で導入しているので、多くの企業では補助していません。
通勤費については週3日以上在宅勤務する場合は定期券ではなく、毎回精算した方が割安になる場合があります。

テレワークの問題点、難しさ

ある調査ではテレワーク実施の問題点・課題について以下のような声が寄せられました。
●労働時間の管理が難しい
●進捗状況などの管理が難しい
●情報セキュリティに問題がある
●コミュニケーションに問題がある
●機器のコストがかかる
●人事評価が難しい
これらの意見は「テレワークを導入しない理由」と、ほぼ一致しています。前項でご紹介した手順に従って、課題をひとつずつクリアしていけば、中小企業であってもテレワークは導入できます。

2020年5月に実施した日本生産性本部の調査によると、今後もテレワークを続けたいかどうかについて聞いたところ、「そう思う」24.3%、「どちらかというとそう思う」38.4%で、あわせて約6割がコロナ後もテレワークを希望すると答えています。
その一方、在宅勤務によって業務の効率が上がったかについては、「下がった」24.8%、「やや下がった」41.4%と十分な成果が得られていない実態が分かりました。
コロナウィルスによる非常事態宣言で、あわててテレワークを導入した企業では「走りながら考える」方式で、課題を抱えながらなんとか過ごしてきた感があることでしょう。
テレワークの本来の目的は業務の効率化です。企業と従業員双方の信頼関係を強めて、withコロナの時代を生き抜いていきましょう。

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